考城隍(神になる試験)

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この物語は河南省の神になった男のお話。

神になる試験があるのだけれど中国の伝説は人と密接に結びついている。その為日本の物語とは一味違う趣があるね。

隍は空堀の意味。これは堀の神になる試験を受けた物語。

考城隍

 私の姉婿の祖父は名を宋江といって病を養っていました。

 ある日彼が床に臥せっている時、一人の官吏(役人)が白馬を連れてやってきて、彼が言う事には「是非考試(日本でいう所のテスト)を受けていただきたい」と。

宋江は「まだ考官(試験管)も来ていないのに、何故すぐに考試を受けねばなりませんか?」と問いましたが、官吏は多くを語らず病身の宋江を馬に載せました。

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 見慣れぬ道を行くと、ある城郭のもとへとたどり着きましたが、どうやらこの場所は国府(王国の主城)の様ででした。
この城の王府へ入ると、豪華絢爛、華美を尽くした宮殿へと案内されました。

正面の大殿には十数名の官員が座っており、奥に関帝が座っておられるようでした。

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 もう既に一人の秀才が座っており、彼はその隣に肩を並べて座りました。

その席上には筆と紙が置いてあり、席へ着くとすぐ試験が始まります。

内容は八つの字で「一人二人、有心無心」とだけ。その後二人はすぐに文章を完成させました。

十数名の官員は二人の答案を見、宋江の答えを褒め讃えます。

それを見て関帝は命じます。「河南に一つ城隍神の空きがある。赴任を命ずる。」

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 宋江は聞くや否や跪き泣きながら訴えます。「私の家には老いた母がいるだけです。七十も過ぎ、私がいなくなれば誰も養うものがありません。母が亡くなった後であれば謹んで職に就きましょう」

関帝は彼の母の命数を調べさせます。すぐに宋江の母の命数が九年と分かります。

 関帝は言います。「本来ならすぐに役に就いてもらいたいところであるが、愛孝の心に免じて九年間の暇を遣わす。その代り九年間この秀才に宋江の代わりをさせよう。その後任期を任せる事にする。」

その後秀才と宋江は退出し、相伴って城外へと退出してきました。彼は馬に乗り郷里へ帰宅すると突然夢から覚めます。

 実は彼が死んで既に三日も経っていました。棺桶の中で叫ぶ彼を宋江の母が聞きつけ彼を助け出します。程なくしてまた彼の日常が戻ってきました。
その後宋江はある話を聞きます。ある男性が突然世を去っていたと。共に試験を受けた張という秀才はその日亡くなっていたのでした。
 九年後、宋江の母親は果たしてこの世を去ります。宋江は葬儀後、身を清め、衣服を新しいものに召し換えて、彼も赴任の地へと赴くのでした。

 彼の岳父は城里にて、ある日突然宋江が豪華に飾った馬に乗り、大勢の車馬を引き連れて彼が家に別れを告げたのを聞きました。

 一族の皆が驚き宋江の家に行くとそこでようやく宋江が亡くなっていたのを知ったのでした。そして彼が神になったことを知る由もなかったのです。

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宋江は自身でも自伝を書き綴っていたようなのですが、戦乱の世最中その記録はなくなり、物語はこれだけしか残っていないのでした。

 

神になる宋江と親孝行の教えと…様々な思いが短い物語の中に込められている話だね。神と人との境目が日本の伝説とは違うのが印象的!

via.蛋蛋赞.zuitt.