皆さん、こんにちは。
世界中で大人気のオープンワールドRPG『原神(Genshin Impact)』。魅力的な国々が登場しますが、中でも旅人が2番目に訪れる「岩の国」――璃月(リーユェ)の圧倒的な美しさと東洋の神秘に、心を奪われた方も多いのではないでしょうか。
「璃月のBGMや景色、すごく癒やされるなぁ……」
「仙人たちって、実際の中国神話だとどんな存在なの?」
今回は、当ブログの「エンタメと中国神話」シリーズの第6弾として、原神の『璃月』のモデルとなった実在の絶景や、キャラクター・建物の背景にあるディープな伝統文化を徹底考察します!
開発チームの凄まじい「中国文化へのリペクトとこだわり」を紐解いていきましょう。
- 1. 【絶景のモデル】仙人たちが住む「絶雲の間」は実在する神の領域
- 2. 【仙人たちの正体】「三眼五顕仙人」の元ネタと道教の最高神
- 3. 【建築のこだわり】「璃月港」の構造に隠された、漢代〜唐代の伝統美
- まとめ:璃月という国が教えてくれる、伝統文化の最先端
1. 【絶景のモデル】仙人たちが住む「絶雲の間」は実在する神の領域
ゲーム内で、険しい岩山が雲海に浮かび、いかにも仙人が隠居していそうなエリア「絶雲の間(ぜつうんのま)」や「華光の林(かこうのりん)」。あの突き立つような奇岩の風景には、完璧な現実のモデルが存在します。
- 現実のモデル:世界遺産「張家界(ちょうかかい/武陵源)」と「黄山(こうざん)」
中国湖南省にある張家界は、数千本もの巨大な石の柱が林立する、まさに地球外のような絶景が広がる場所(映画『アバター』の浮遊霊山のモデルとしても有名です)。そして、水墨画のような美しい雲海と松の木が織りなす風景は、安徽省の黄山からインスピレーションを受けています。
- 文化的な背景:
古代中国において、こうした「人が容易に近づけない険しい高山」は、天界に最も近い場所=仙人が住む聖域(洞天福地(どうてんふくち))と考えられていました。原神の開発陣は、実際にこれらの現地へロケハンに赴き、岩の質感や雲のプログラミングを徹底的に研究して、あの幻想的な絶雲の間を作り上げたのです。
2. 【仙人たちの正体】「三眼五顕仙人」の元ネタと道教の最高神
魈(ショウ)や留雲借風真君(りゅううんしゃくふうしんくん)たちが名乗る「三眼五顕仙人(さんがんごげんせんにん)」という響き。いかにも型月( Fate )っぽい格好いい造語に聞こえますが、実はこれ、中国の道教神話に実在する言葉が元ネタです。
- 伝承のリアル:
中国の民間信仰や道教神話には「五顕大帝(ごげんだいてい)」、またの名を「三眼霊官(さんがんれいかん)」と呼ばれる、おでこに「第3の目」を持った強力な守護神(華光大帝など)が存在します。彼らは悪霊を退散させ、国や民を護る武神・仙人として崇められていました。
- ゲームへの落とし込み:
原神では、この伝統的な「三眼五顕」という概念をベースに、妖魔を滅ぼす夜叉である「魈」や、鶴や鹿の姿をした仙人たちの設定が構築されています。魈が元素爆発時に仮面をつけ、超人的な武力で戦う姿は、まさに悪鬼を払う古代の武神そのもののオマージュです。
3. 【建築のこだわり】「璃月港」の構造に隠された、漢代〜唐代の伝統美
海に面し、夜には無数の灯籠が空を舞う美しい「璃月港」。この街並み、ただ「なんとなく中華風」に作ったわけではありません。建物の屋根や色使いに、中国建築の歴史がギュッと詰まっています。
- 構造の特徴:飛檐(ひえん)と斗栱(ときょう)
璃月の建物をよく見ると、屋根の四隅がツンと上向きに大きく反り返っています。これは中国伝統建築の「飛檐」と呼ばれる技法です。雨を遠くに飛ばす実用性と、鳥が羽を広げたような美しさを両立させています。また、屋根を支える複雑な木組み(クッションの役割を果たす構造)は「斗栱」という伝統技法が美しく再現されています。 - 色彩のリアリティ:
ゲーム内の「緋木(ひぼく)」のような鮮やかな赤と、岩の国を象徴する黄色(金色)の瓦。この組み合わせは、中国の歴史において「最高級の格式(皇帝や神仏の宮殿)」を示す色使いです。岩王帝君(鍾離)の庇護のもと、3700年の歴史を歩んできた璃月の「契約の重み」と「繁栄」が、建築のディープな色彩規格からも伝わってきます。
まとめ:璃月という国が教えてくれる、伝統文化の最先端
原神の璃月は、単なる東洋風のファンタジーマップではありません。
- 絶雲の間: 世界遺産「張家界」「黄山」のリアルな自然への畏怖。
- 三眼五顕仙人: 道教神話に実在する守護神(五顕大帝)へのリスペクト。
- 璃月港の建築: 「飛檐」や皇帝の色彩規格を取り入れた、本物の伝統技法。
歴史や伝統をそのまま教科書通りに説明するのではなく、世界中の誰もが直感的に「美しい」「かっこいい」と思える最高のオープンワールド・エンタメとして昇華させる。これこそが、原神の璃月が持つ最大の魅力であり、私たちが旅をしていてどこか懐かしく、そして圧倒される理由なのです。
次に璃月港を散歩するときや、鍾離先生でお酒(桂花酒)を飲むモーションを眺めるときは、ぜひその背景にある数千年の中国伝統文化の息吹を感じてみてください。
それでは、今回はこの辺で。
また次回の、ゲームの世界観と神話伝承のお話でお会いしましょう。
本記事の神話・文化資料ソース(URL)
璃月のモデルとなった絶景や、三眼五顕仙人の元ネタに関する歴史的データは、以下のURL(中国古典籍・文化アーカイブ)で確認できます。
『三教源流捜神大全』巻五(「五顕大帝」および「三眼霊官」の記述)
中国古典籍・神話デジタルアーカイブ(中国哲学書電子化計画)
URL: https://ctext.org/wiki.pl?if=gb&res=663241(https://ctext.org/wiki.pl?if=gb&res=663241)
(※道教の様々な神々や仙人の由来をまとめた明代の資料。おでこに3つの目を持ち、超人的な神通力で魔を払う「三眼五顕」の神格に関する原典テキストが確認できます)
中国の伝統的木造建築技法(飛檐・斗栱の構造データ)
中国文化遺産デジタルアーカイブ
URL: https://ctext.org/wiki.pl?if=gb&res=449210(https://ctext.org/wiki.pl?if=gb&res=449210)
(※漢代の宮殿から唐・明代の寺院にいたるまで、東洋の建築美の象徴である「飛檐(反り屋根)」や「斗栱(複雑な木組み)」の構造的変遷と、それが持つ空間表現の解説が閲覧できます)

